中庭にて、くさぐさの

二次文(腐あり)、断片、読んだ本の感想。 作品以前のものを置くような場所です。 少しだけオープンな倉庫、遊び場。

あめのひ(2次創作 鬼白)

雨が降っている。耳を濡らす音が、空間を埋めている。体が形作られたばかりの頃、まだ常世との境界が曖昧だった現世を、飽きず見て歩いた。晴れと雨とで様相を変える太古の森を探るのは楽しかったけれど、洞窟の中で雨宿りをしながら眠るのは少し苦手だった…

竜の庭

薔薇の花咲く季節には、花に触る時注意しなさい、と言われて育った。竜を育てているわたしの家では、毎年春には、その年生まれた小さな仔竜達が飛び方を覚え始め、庭を気ままに飛び回る。彼らはとりわけ薔薇の花に潜り込むのが好きだ。よい匂いにふかふかの…

竜種百科事典 闇のドラゴンの項

闇のドラゴンと呼ばれる種族がある。 この場合の闇とは邪悪な、という意味ではない。それは魔力を糧に生きる竜の一種で成竜ともなれば強大な魔力を操るようになる。糧となるような魔力の濃い場所・・聖地とされるような場所などに居座って、そこを守護してい…

【YOI】縁側うたたね

※練習用に書いたいまいちオチてない小話。ユーリは思春期。 「だからなんでくっついて寝てるんだよお前らは!あっついだろうが!」 夏の夕暮れ、風通しを良くするよう、あけはなしてある勝生家の座敷に、ユーリの怒りの声が響いた。続いて、ちりんちりんと風…

神獣の日

観光地と化した隠れ里の片隅に、桃園の主人はひっそりと薬屋を営んでいる。小さな店の引き戸をからりと開けると、鼻をくすぐる漢方の匂い。耳を立てる兎達の向こう、ひょろりと高い白衣の背を丸めて、湯気立つ鍋をかき混ぜていた男が振り返る。左の耳飾りに…