中庭にて、くさぐさの

二次文(腐あり)、断片、読んだ本の感想。 作品以前のものを置くような場所です。 少しだけオープンな倉庫、遊び場。

竜の庭

薔薇の花咲く季節には、花に触る時注意しなさい、と言われて育った。竜を育てているわたしの家では、毎年春には、その年生まれた小さな仔竜達が飛び方を覚え始め、庭を気ままに飛び回る。
彼らはとりわけ薔薇の花に潜り込むのが好きだ。よい匂いにふかふかの花びらは居心地が良いのだろうか。乱暴に触ると、驚いて花から飛び出してくることがある。ぶつかっても怪我はしないかもしれないけれど、ドラゴンも人間もお互い痛い思いをするからね、気をつけなさいと脅されているので、わたしはいつも、バラを触る前にそっと花の中を覗き込む。
その日も、一つ一つ慎重に花の中をを確認しながらバラの枝を切り、棘をざっと切って花束を作った。お茶の席に飾ろうとテーブルに戻ると、小さな桃色の仔竜がティースプーンの上に乗って得意そうにしていた。どうやら飛行が上手くいったらしい。全く、春の庭は賑やかである。

 

※とある方の作品(写真)を見かけて思いついた断片。